血行動態評価の基礎知識

※実践的な経食道心エコー参考書


※用語は経食道心エコーの基本用語確認のページを参照して下さい。

用語一覧

各計算式はTEE計算式一覧のページにあります。
※弁については別項目を設けていますのでそちらを参照してください。
PV-DT(減速時間) 正常値160~200ms。左室弛緩能低下で延長、左房圧の上昇や左室コンプライアンスの低下で短縮。若年者は左室の弛緩能が高く、短縮しやすい。
ピーク・ピーク圧較差 左室の最大圧較差と大動脈の最大圧較差の差。
最大瞬間圧較差 左室と大動脈の圧較差のうち最大の瞬間のもの。
圧半減時間 圧格差がピークを迎えてから半減するまでの時間。
心係数 体表面積あたりの心拍出量のこと。
定量的測定法 僧帽弁逆流量を評価する方法。僧帽弁通過血液量から大動脈の1回拍出量を引くことで算出する。
近位部等流速表面法 PISA法ともいう。弁逆流を評価する方法。逆流の際に生じる半円球(PISA)を用いることによって弁狭窄がある患者でも正確に逆流量を計算することが出来る。
Tei index Index of myocardial performance(IMP)とも。心臓の収縮能と拡張能を総括して心臓自体の機能の善し悪しを簡便に評価できるもの。左室でも右室でも可能。
左室側壁僧房弁輪移動速度 組織ドプラに置いて左室側壁の僧房弁輪の移動速度を測定したもの。弛緩能低下や偽正常化パターンで低下している。正常は8.0以上。
E/EM E波の速度と僧帽弁輪移動速度の比。15を超えると左室充満圧が高いことを意味する。
壁張力 左室壁にかかる張力のこと。
壁応力 左室壁にかかる応力のこと。
虚血心筋 血行の再建が十分ではない状態の心筋。
気絶心筋 血行が十分に改善しているにも拘らず、収縮しない状態の心筋。経時的に改善してくるのが特徴。
冬眠心筋 冠血流が制限されているため機能不全になっているように見えるが救出可能な心筋。低用量ドプタミン不可で改善するが、高用量だと再び機能不全を起こす。
ドブタミン負荷心エコー ドプタミンを負荷したした際の反応により心筋の状態を確認するもの。冬眠心筋の鑑別や心機能の改善の予測などを行うことが可能。感度85%、特異度88%である。
心筋コントラスト心エコー エコーコントラスト剤を大動脈の基部に注入することで心筋内の微小血管を評価するもの。
ポジトロン放出型断層撮影法(PET) 生存可能な心筋を決定する最も重要な検査。冬眠心筋においては血流が減少していても代謝が正常であるため、血行再建の必要性を評価することができる。
圧容積ループ 心臓の各時相における圧と容積の変化を見たもの(下図)。
最大圧立ち上がり速度 dt/dpとも。血流速度が100cm/sから300cm/sまで上昇するまでの時間を用いて測定する圧の立ち上がり速度のこと。圧較差はベルヌーイの定理によりそれぞれ4mmHg、36mmHgであるため、その差の32mmHgをこの時間で割ることにより算出することが出来る。
 

基準値一覧

※目安は「大体これくらいという感性をつけるために」とりあえず暗記するための数値です。まずはこれを覚えましょう。暗記優先のため基準値から外れていることもあります。
項目 目安
左房径(mm) 25~40 30
左房容積(ml) 30~50 20~45 40
左室拡張末期径(mm) 44~52 41~47 50
左室収縮末期径(mm) 26~34 25~31 30
左室拡張末期容量(ml) 73~113 57~91 100
左室収縮末期容量(ml) 13~53 18~32 30
左室駆出率(%) 60~70 60
左室重量(g) 100~150 80~130 100
右房収縮末期径(mm) 29~39 26~36 30
右室壁(mm) 5 5
右室拡張末期径(mm) 26~36 23~33 30
心室中隔厚(mm) 8~10 7~9 10
経僧帽弁流入血流伝播速度(cm/s) 55~100 70
     

重症度評価一覧

項目 正常-軽度境界 軽度-中等度境界 中等度-重症境界
EF 55 45 30
FS 25 20 15
左室 TEI index 0.45 0.60 0.80
右室TEI index 0.40 0.55 0.70
左室壁厚 12mm 15mm 20mm
左房容積係数 25ml/m2 30ml/m2 40ml/m2
心嚢液貯留 --- 0.5 2
最大圧立ち上がり速度 1200ms   400ms
     




基礎知識

僧帽弁の圧波形

MV.jpg E波:拡張早期波(左室の拡張による血液の流入)
A波:心房収縮波(左房の収縮による血液の流入)
E波振幅…20~30mm
E/A比…1.1~2.0
・弛緩能低下パターン:E/A比が1より小さくなる
・偽正常化パターン:本来異常があるのにE/A比が正常となる。見分け方は下記。
・拘束性パターン:E/A比が2.0以上となる
※一般的には弛緩能低下パターンは左室の拡張能の低下を、拘束性パターンは左房の収縮能の低下を意味します。
※心拍数が上昇したときは左房が頑張るのでA波が上昇します。
※引用サイト:循環器
<代表疾患>
パターン 代表疾患
弛緩能低下パターン 高齢、虚血性心疾患
拘束性パターン 収縮性心膜炎、アミロイド心筋症

※偽正常化パターンの見分け方。
① 組織ドプラにおいて左室側壁僧房弁輪移動速度が8cm/sec未満に低下
② 肺静脈S波<肺静脈D波
③ 前負荷の低下でE/A比が低下する。(弛緩能低下パターンに近づく)
④ カラードプラ上で経僧房弁流入血流伝搬速度が45cm/sec未満に低下
⑤ 肺静脈A波の持続時間>僧房弁A波の持続時間
⑥ 肺静脈A波の速度が25cm/sec以上に上昇

肺静脈血流速度

img5.png PVa:心房の収縮による逆流波。
PVs1:収縮期初期に左房が弛緩することによって生じる。
PVs2:収縮期後期において、左室容積が減少し、僧帽弁が心室側に引っ張られることで生じる。
PVd:僧帽弁の開放による。
PVa dur:PV-DTのこと。減速時間ともいう。この時に左房圧と左室圧が等しくなる。
※正常ではPVs>PVd

心臓圧曲線

contract_a_v-e1358953718338.jpg 心房収縮期→等容収縮期→心房弛緩期・心室駆出期→心房充満・等容弛緩期→心房駆出期
※引用サイト:循環器スタッフ勉強会

圧容積ループ

sr24.gif 圧容積曲線.jpg

肝静脈血流

肝静脈血流.jpg S波(収縮期順行性血流):収縮期における右房の弛緩によって順行性に流れる血流
D波(拡張期順行性血流):拡張期に血液が心室に流れ込み、右房圧が減少することを反映した血流。
A波(拡張期逆行性血流):心房が収縮することによって肝静脈に逆行する血流

  • 最終更新:2017-03-16 09:25:39

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