虚血性心疾患

※合併症麻酔に一歩深い知識を



分類

・AHA分類(American Heart Association grading committee)
新規労作性狭心症 初発、または半年以上症状がなかった者の狭心症
変動型狭心症 以前より労作性狭心症があった患者で、症状が急速に増悪したもの
新規安定狭心症 安静時に共通発作が生じるようになったもの。ニトログリセリンは効果が弱い
※上記症状が3週間以内に始まり、1週間以内に症状があり、心筋梗塞でないものを不安定狭心症とする。

・CSS分類(Canadian Cardiovascular Society)
Ⅰ度 激しい運動や長時間の運動で症状が出現するが、日常生活に支障がないもの。
Ⅱ度 階段や坂道など、負担の大きい日常生活が制限されるもの。
Ⅲ度 平地の歩行などの通常動作でも症状が誘発されるもの。
Ⅳ度 あらゆる日常動作で症状が出現するもの。

・術前心疾患評価のためのステップ分類
ステップ1 緊急手術がどうしても必要な時。そのまま手術を行う。心機能評価が出来るのならステップ2へ。
ステップ2 高度リスク因子を有する患者。心臓の検査や治療を優先し、落ち着いてから手術を行う。
ステップ3 リスクが軽度~中等度の患者。低侵襲手術であればそのまま施行可能。手術が低侵襲出ない場合はステップ4へ。
ステップ4 患者に4METS(階段を1階分上る程度)の運動耐用量があり、心疾患の症状がないならそのまま手術を行う。運動耐用量が4METS以下の時にはステップ5へ。
ステップ5 軽度リスクの場合はそのまま手術を行う。中等度のリスクの場合はβ遮断薬を投与しながら手術を行う。高侵襲手術の場合は検査を優先する。

概要

何らかの原因により心臓の栄養を与える冠動脈が閉塞または狭窄し、心筋の虚血が出現するもの。
心電図でST変化がみられることが多く、狭心症や心筋梗塞が疑われる場合には心電図変化への注意も必要となる。

注意点

① 手術適応に注意

心筋梗塞後30日以内であれば基本的に定期手術は避けるようにする。
30日以上経っていても不安定狭心症や心不全、不整脈などの心疾患があるようであればその治療を最優先する。
また、冠動脈バルーン拡張術を行ってから2週間以内は早期再閉塞の可能性があるため手術は延期したほうがよい。それ以降は1ヶ月以内であればアスピリンを術前まで継続する必要がある。
ベアメタルステントを使用している場合には6週間以内は手術を避けたほうがよい。
薬剤溶出ステントを用いている場合には1年間は手術を避けた方がよい。また、それ以上の期間が経っていても、アスピリンは出来る限り継続した方がよい。

手術適応については上記のステップ分類を参照のこと。

② 注意すべき薬剤

・NSAIDS:腎血管に作用し、Na貯留傾向とすることで循環血液量を上昇させ心血管リスクを上昇させるため避ける。
・β刺激薬:心拍出量は上昇するため冠血流は増えるが、それ以上に心臓の酸素需要が上昇するため避ける。

③ 術前のCABG、PCI

中等度以上侵襲の非心臓手術を行う場合にはCABGで予後が改善するとのデータがあるが、低侵襲の場合には意味がないとされている。
PCIは有用性も乏しく、ベアメタルステントでも施行後に6週間の期間をあけないといけないことから、意味がないとされる。

④ 予防のために投与すべき薬剤

通常の内服薬:普段狭心症のために内服しているβ遮断薬やニトログリセリンなどは通常通り内服を継続する。
バイアスピリンやプラビックスなどの必要がある場合がある。

β遮断薬:高リスクの患者に対して周術期の予後を改善することがある。ただし、低リスク患者では予後が逆に悪化する可能性があるため避けた方がよい。
ニトログリセリン:狭心症治療薬の代表ともいえる薬剤だが、術中の低血圧や頻脈などを誘発するリスクもあり周術期の使用は慎重にすべきとなっている。
α2アゴニスト:α2アゴニストで予後が改善するというデータが出始めている。術後の鎮静も含めて投与してみるのも良いかもしれない。
ニトロダーム・フランドルテープ:リスクが高くない時には術日に貼付してもよい。

⑤ 麻酔法の選択

吸入麻酔には冠動脈保護作用があるので、適する。また、オピオイドも全身の血行動態が安定する為適する。
必要に応じてβ遮断薬やニトロール(5mg/10ml,4~6ml/hr)、シグマート(48mgを溶解し48mlに,2〜6ml/hr)などの薬剤を用意する。緊急時にはミオコールスプレー舌下に1噴霧しても有効。
冠スパズムがある場合には麻酔深度を深くすると発作の予防になる。
低血圧にはβ刺激薬は避けた方がよい。α刺激薬は冠血流を保つ効果もあるため推奨される。
リスクが高い時には心筋梗塞出現時の精査のために経食道心エコーを用意しておいてもよい。

輸液量については意見が分かれているが、過剰に絞ることなく、過剰輸液を避け、適切な循環が保たれる程度にする。
昇圧はα刺激薬の方が適するが、徐脈が強い時にはエフェドリンを使用してもよい。
冠攣縮の可能性があるときは過換気を避けること。
また、シバリングにより術後の冠動脈リスクが上昇するため、体温には特に気をつける必要がある。

  • 最終更新:2017-11-01 08:23:44

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