肺塞栓

※合併症麻酔に一歩深い知識を



分類

※肺塞栓の重症度分類
血圧正常型 血圧が正常であり、右心深谷心不全所見を認めない
循環安定型 ショックを認めないが右心負荷所見がある場合。
ショック型 心源性ショックがありカテコラミンの投与を必要とする。
心停止型 重度のショックがあり心肺蘇生が必要となるもの。

臨床的肺塞栓可能性予測

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肺塞栓のリスク因子

軽度 肥満、妊娠、エストロゲン治療、下肢静脈瘤
中等度 高齢、長期臥床、鬱血性心不全、呼吸不全、悪性疾患、CV留置、抗癌化学療法、重症感染症
高度 静脈血栓塞栓症の既往、血栓性素因(アンチトロンビン欠乏症,プロテインC欠乏症,プロテインS欠乏症,抗リン脂質抗体症候群など)、下肢麻痺、ギプスによる下肢固定

概要

静脈でできた血栓などが肺に流れてきて肺の血管を閉塞する病態を肺塞栓という。エコノミークラス症候群などでよく知られている。
肺血流が減少することにより呼吸状態が悪化するだけでなく、右室に負荷がかかり右心不全に発展することがある。時に致死性となるため、診断や鑑別について一定の知識を得る必要がある。

注意点

① 覚醒時に症状の有無を確認する

覚醒時の症状としては以下の特徴があります。

身体所見:胸痛、動悸、失神、呼吸困難、咳嗽、喘鳴、冷汗、血痰
バイタル:頻呼吸、頻脈、血圧低下、PaO2低下、PaCO2低下、SpO2低下、発熱

これらの症状のうちすべてが生じるとは限りません。麻酔導入前にroom airでのSpO2を確認せずpreoxigenationを行ったために肺塞栓を見逃す可能性もあるため、酸素投与前のSpO2は必ず確認しておくとよいでしょう。

② 全身麻酔時における肺塞栓の確認

酸素飽和度の低下、血圧の低下、etCO2の低下およびPaCO2の上昇が同時に存在していた場合、肺塞栓を疑います。
その他、心電図上でのST低下、etCO2モニターでの心不全波形への変化が認められることがあります。

③ 肺塞栓への対策

麻酔中は全身を動かさないようにするため、当然ながら血栓のリスクが上昇します。また、周術期にも長期臥床をしなければならないため、肺塞栓が出現する可能性は高くなります。
ただし、術中にできる予防はそれほど多くありません。

手術中にヘパリンや抗血栓薬が必要であれば使用を継続する場合もあります。それについては循環器内科など専門科と必要性について相談する必要があるでしょう。
下肢の血流の鬱滞を防ぐためにふっとポンプなどを使用しても良いかもしれません。また、脱水が原因の一つとなるため、輸液は十分に行っておくと良いでしょう。

④ 肺塞栓を疑った場合

麻酔の場で肺塞栓の診断のためにできる最も簡便な検査は心エコーであります。
経食道エコーの他、経胸壁エコーも有効であり、右室拡大や左室の扁平化が確認されることが多いです。

エコー検査を使用する場合、以下の診断基準が適応されます。
※McConnell
・左室自由液の壁運動異常あり
・右室中央部の壁運動異常あり
・心尖部運動障害なし

※Miniati
・右室拡張末期径27mm以上
・三尖弁逆流2.7m/sec以上
・右室壁運動低下あり

検査が可能であれば造影CTや肺動脈造影、肺血流シンチグラフィなどを使用します。
強く疑う場合や緊急性の高い場合には循環器内科にコンサルとすると良いでしょう。

⑤ 肺塞栓に対する対応

必要に応じて以下の対応をします。

心停止あり:ACLSに基づく心肺蘇生。PCPSや血栓溶解薬(※)を投与
(※クリアクター13,750~27,500IU/kgを数分かけて投与する。ウロキナーゼも原理上可能だが保険適応なく投与量も規定されていない。心筋梗塞ならて96万単位を溶解し30分間かけて投与。いずれも下記の場合は禁忌)
SpO2低下時:酸素投与
血圧低下時:カテコラミン投与
未分画ヘパリン投与:80単位/kgを単回静脈投与する.以後18単位/kg/hrで持続静注を開始。ただし、下記の場合は禁忌。
時間に余裕がある場合:循環器内科コンサルト
他科に依頼する治療:IVCフィルター留置、カテーテル治療、外科的治療

・血栓溶解療法の絶対禁忌:活動性の内部出血、最近の特発性頭蓋内出血
・血栓溶解療法の相対禁忌:大規模手術、出産、10日以内の臓器細胞診、圧迫不能な血管穿刺、2か月以内の脳梗塞、10日以内の消化管出血、15日以内の重症外傷、1か月以内の脳神経外科的あるいは眼科的手術、コントロール不良の高血圧(収縮期圧>180 mmHg;拡張期圧>110 mmHg)、最近の心肺蘇生術、血小板数<100,000/mm3、プロトロンビン時間<50%、妊娠、細菌性心内膜炎、糖尿病性出血性網膜症
・未分画ヘパリン原則禁忌:出血性潰瘍、脳出血急性期、出血傾向、悪性腫瘍、動静脈奇形、重症かつコントロール不能の高血圧、慢性腎不全、慢性肝不全、出産直後、大手術・外傷・深部生検後の2週間以内

  • 最終更新:2017-06-08 23:10:39

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