肝機能低下・肝硬変

※合併症麻酔に一歩深い知識を



分類

Child-pugh分類
  1点 2点 3点
血清ビリルビン(mg/dL) 2.0未満 2.0~3.0 3.0より大
血清アルブミン(g/dL) 3.5より大 2.8~3.5 2.8未満
腹水 なし 少量 多量
肝性脳症 なし 軽度 重度
PT(秒)
INR
4未満
1.7未満
4~6
1.7~2.3
6より大
2.3より大
A=5~6点 B=7~9点 C=10~15点


概要

ウイルス感染や脂肪肝などにより肝臓が再生と破壊を繰り返すことで線維化した状態。
肝機能の低下や薬剤排出時間の延長、門脈圧亢進などの症状を呈する。

注意点

① 肝機能低下に伴う合併症の存在に注意

肝機能の低下によるトロンボポエチンの減少や、脾腫の存在により血小板減少が生じやすい。
胆汁合成能の低下によりビタミンKの吸収が阻害され、凝固系が低下する場合がある。
腹水がある場合には塩分制限、水分制限、利尿薬の投与で改善させる。低カリウム血症を生じやすいのでアルダクトンを選択した方がベター。


② 肝腎症候群・肝肺症候群に注意

肝硬変に伴うアルブミンの減少により血管中の水分が失われ、急性の腎不全を合併していることがある。
また、明らかな心疾患や肺疾患が認められないにもかかわらず、PaO2が低下することがある。
肝硬変がある患者の場合必ず腎機能と肺機能を評価しなければならない。

③ 肝血流を維持する

肝臓は門脈と静脈に挟まれた数少ない臓器であり、麻酔条件によって鬱血したり血流低下することも多い。
基本的には極度の低血圧にしないことと、静脈圧を下げることで肝血流は保たれやすい。
具体的には、極端な低血圧にしないこと、過剰な輸液を避けること、強いPEEPをかけないことで実現できる。

④ 薬物の作用が遷延しやすいので注意

低アルブミン血症を合併している場合には、腹水や全身水分量の増加により薬物の分布堆積が増大するため、体内に蓄積する可能性がある。

⑤ 肝機能の低下に対する薬物への影響

肝機能異常がある場合には当然ながら肝代謝が影響する薬物はすべからく影響を受けることとなる。

☆使用を避けるもの:肝障害の増悪
アセリオ

☆効果の増強・半減期の延長を呈するもの:肝代謝だが禁忌ではない
フェニタニル、チオペンタール、プロポフォール、ミダゾラム、ベクロニウム、ロクロニウム

☆影響を受けないもの
レミフェンタニル、スキサメトニウム、吸入麻酔薬

☆効果が減弱するもの:肝障害により逆の作用の物質が増加するため
イノバン、ノルアドレナリン

⑥ 食道静脈瘤

食道静脈瘤の存在がある場合にはマーゲンチューブや軽食道エコーの使用はできる限り避けるようにする。

  • 最終更新:2017-06-08 23:05:20

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