筋弛緩薬の違い

※研修医向けた詳細な麻酔マニュアル



1.筋弛緩薬の分類の基本

筋弛緩薬は脱分極性のものと非脱分極性のものの二種類に分類されます。
近年は非脱分極性のものがメインとなりますが、時には脱分極性を使用するときもあります。

2.筋弛緩薬の違い

※禁忌の項目について「この薬剤への過敏症」は当たり前なので省略しています。
薬剤名 概要
ロクロニウム

初回量
0.6~0.9mg/kg
追加投与
0.1~0.2mg/kg
持続投与
0.7μg/kg/min
投与注意:筋疾患がありスガマデクスが使用できない場合(筋力低下が遷延する可能性がある)
商品名エスラックス。
非脱分極性の筋弛緩薬の一種。作用発現が早く(60~90秒)、禁忌項目もほとんどない上、持続投与も可能であり、スガマデクスという効果の優れた拮抗薬も存在している。あらゆる意味で万能な薬剤であり、ほとんどこれしか使用しない病院も多いと思われる。
ベクロニウムと比較してアナフィラキシーの出現が多いという報告もある。妊婦には慎重投与。
ベクロニウム

初回量
0.08~0.1mg/kg
追加投与
0.02~0.04mg/kg
投与注意:筋疾患がありスガマデクスが使用できない場合(筋力低下が遷延する可能性がある、妊婦
商品名マスキュラックス。
非脱分極性の筋弛緩薬の一種。ロクロニウムと比較して作用発現時間が長い。ロクロニウムは妊婦に対しては慎重投与だが、こちらは禁忌に指定されている。
アナフィラキシーが生じにくいという報告などがあるものの、エスラックスに対する明らかな優位性に乏しく、最近ではあまり使用されなくなっている。
スキサメトニウム

初回量
1mg/kg
追加投与
0.5mg/kg
投与注意:重症の熱傷、広範性挫滅性外傷、尿毒症、四肢麻痺、ジギタリス中毒の既往歴、緑内障
サクシンの商品名で売られていたこともあったが、サクシゾンと名前が似ており、誤投薬事件が起こったことから、名称変更された。今はスキサメトニウム注。
脱分極性の筋弛緩薬の一種。作用発現が早いため、迅速導入などで好んで使う麻酔科医もいる。ただし、追加投与で除脈や第2相ブロックを出現させる可能性があり、切れるのも非常に早いため基本的には維持に適さない。もし第2相ブロックが出現した際には投与中止し、経過観察を行う。TOF値が40以上まで回復したらネオスチグミンで拮抗しても良いが、基本的には禁忌である。
悪性高熱のリスクファクターとしても知られている。ほとんど胎盤を通過しないため、妊婦の導入には使いやすい。

3.筋弛緩薬の拮抗薬

薬剤名 概要
スガマデクス

TOF2以上
2mg/kg
PTC1以上
4mg/kg
導入直後緊急リバース
16mg/kg
投与注意:なし
商品名ブリディオン。ロクロニウムの拮抗薬であり、血中のロクロニウムと反応して無効化することで神経筋接合部からのロクロニウムの析出を促進することで筋弛緩を拮抗する。効果発現も非常に速いが、ロクロニウムを大量に投与している状態では筋弛緩が再出現する可能性があるため、注意が必要。
ネオスチグミン

TOF4以上
0.02~0.05mg/kg
投与注意:必ず硫酸アトロピン0.01~0.02mg/kgを併用する、消化管・尿管の閉塞(閉塞の増悪の可能性)、脱分極性筋弛緩薬の投与(筋弛緩作用の増強)
商品名はワゴスチグミン。最初からアトロピンと混合されたアトワゴリバースという薬剤もある。
ロクロニウムに対してはスガマデクスという優れた拮抗薬があるため、実質はベクロニウムに対する拮抗薬となる。ある程度筋弛緩が切れている状態でしか使用することができないこと、単独投与できないなどの欠点がある。

4.筋弛緩薬の使い分け

※過敏症がない限りは基本的にロクロニウムがあれば何とかなります。迅速導入や産科麻酔でもロクロニウムを使う人も多いです。
リスク名 概要
ロクロニウムへの過敏症 ほぼ唯一とも言えるロクロニウムを使えない状況。代替薬としては、似た使い方をするマスキュラックスが使いやすいが、ロクロニウムと交叉耐性が出ていることもあり、両方とも使えないことが多い。こうなると、基本的にはスキサメトニウムで導入して維持は可能なら筋弛緩なしで行うことがベター。
迅速導入 フルストマック状態では導入の速さが勝負を分けることもあるため、スキサメトニウムが好まれることもある。効果発現速度はスキサメトニウムで45秒、ロクロニウムで60秒とされている。
妊婦 スキサメトニウムは胎盤通過性が弱いため、スキサメトニウムが好んで使われることもある。ただし、鎮静を深めてロクロニウムを少量投与する事でも管理が可能であるため、必須ではない。スキサメトニウムによる追加投与のリスクを考慮すると、維持はロクロニウムの方がベターかもしれない。

5.筋弛緩薬が使えない状況

MEPを使用したり、頸部郭清を行うなどで筋弛緩が使用できない状況というのが存在する。
基本的にはロクロニウムで導入し、あるならTOFウォッチを付け、筋弛緩の効果が残っている場合にはスガマデクスを投与するようにすれば良い。
術中はレミフェンタニルを0.1~0.5μg/kg/min程度で持続投与し、その他は通常通りの鎮痛や鎮静(場合によってはTIVA)を行えば多くの場合バッキングしない。

  • 最終更新:2017-03-15 16:44:13

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