甲状腺機能低下症

※合併症麻酔に一歩深い知識を



分類

原発性甲状腺機能低下症 甲状腺の異常によって甲状腺ホルモンが低下した状態。
中枢性甲状腺機能低下症 下垂体や視床下部など、甲状腺を調節する神経の異常によって甲状腺ホルモンが低下した状態。

概要

甲状腺機能低下症は麻酔科医なら必ず何度か遭遇する可能性のあるメジャー疾患である。
多くの場合はすでにコントロールされており、術前投薬さえしておけば問題にならないことも多い。

大まかには下垂体からTSHが分泌され、甲状腺からT4が分泌され、細胞でT3が作られ、甲状腺ホルモンとして作用していると覚えておけばよいでしょう。
なので、T3があればTSHやT4が低くてもホルモンとして正常な役割を果たしていることになります。
一方、内服薬のT4は時効型であり、T3は即効型であるため、維持にはT4を、緊急時にはT3を使うと覚えておきましょう。
なので、よく使われるチラージンSはT4となります。T3としてはチロナミンがあります。乾燥甲状腺末はその混合ですので中間的な作用を出します。

※実際には甲状腺からT3が直接分泌されたり、T4も甲状腺ホルモンとしての活性を持っていたりと、より複雑です。

注意点

① 予定手術の場合

予定手術の場合にはまず、コントロールを聞かせることが最優先になります。内分泌内科に相談してホルモン調整をしてもらうようにしましょう。術前は飲水制限に掛からない時間に内服を継続します。ただし、チラージンSは半減期が1週間程度あり、必ずしも内服継続が必要ではありません。
なお、下垂体性で甲状腺刺激ホルモンと副腎皮質刺激ホルモンの両方が低下している場合にはステロイドを先に補充しないといけないという原則がありますので注意しましょう(逆にすると甲状腺ホルモンにステロイドが消耗され、副腎クリーゼになる可能性がある)。

貧血などの合併がある場合には適宜補正していきます。

② 緊急手術の場合

余裕がある時にはチロナミン50μgを内服します。できれば血液検査をし、正常化するまで8時間ごとに内服を繰り返しましょう。

甲状腺のホルモン剤は内服薬しかないため、緊急性が高い場合には未治療で麻酔を掛けざるを得ません。挿管後にチロナミン50μgを胃管より投与し、心停止、覚醒遅延、術後昏睡などのリスクがあるため、それぞれに対応できるように除細動器の用意やICUの病床の確保などの対策をしましょう。また、副腎クリーゼの予防のためにヒドロコルチゾンを200mg程度投与します。

覚醒遅延が生じやすいため、抜管は慎重に行いましょう。

③ 術後管理

術後は早い段階から甲状腺ホルモンを内服していきます。経口摂取ができない時は経腸で投与しましょう。
可能なら内分泌内科に予め相談しておきましょう。

  • 最終更新:2017-06-08 23:10:27

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