抜管

※麻酔科研修で必ず持って欲しい一冊です

※このサイトは要点のみを記載するようにしています。きちんと勉強するには成書を参照することを強く勧めます。


手術終了が近づいたら

★まずは抜管可能かの判断。
手術終了が近づいた場合にはまず「そもそも抜管していいのか」を考える必要があります。
抜管後は当然術後管理をする必要がありますので、以下の場合は抜管を見合わせた方が無難です。

・腫瘍や出血、強い皮下気腫、声帯麻痺などで抜管すると気道閉塞が生じる可能性が高い。
・PaO2が明らかに低下しており、抜管までに改善する見込みがない。
・自発呼吸がでていない。または不十分であり、改善の見込みがない。
・敗血症などがあり、近いうちにARDSなど重度の肺合併症が出現することが予想される。
・終了後再手術の可能性が高い。
・その他術後管理に問題がある可能性が高い場合。

抜管不可能と判断する場合にはICUなど人工呼吸管理ができるチームに連絡し受け入れ可能かどうかを確認する必要があります。受け入れ可能な場合、プロポフォールやミダゾラム、プレセデックスなどで鎮静をかけ、マスク換気をしながら移動することになります。

★抜管が可能と判断した場合
麻酔薬を一つ一つoffし、抜管に備える必要があります。

手術終了が近づいたら以下のことを行っていきましょう。

・呼吸抑制を起こすような薬剤(フェンタニル、レミフェンタニルなど)をoffあるいは追加投与しない。
・筋弛緩薬(ロクロニウム)をoffまたは追加投与しない。
・(必要に応じて)術後の鎮痛にNSAIDsやアセトアミノフェンの投与を考慮。
・(必要に応じて)PCEAやIV-PCAの投与開始。

手術が終了したら

清潔野の片付けやレントゲン撮影など術後に必要なことが片付いたら抜管に入ります。
慣れた人ならそこに至る前に吸入麻酔を漸減したり、自発呼吸を誘発したりしますが、慣れない内はトラブルの元になるのでやめた方が良いでしょう。
また、他のスタッフにも抜管して良いかを確認する必要があります。

以下の手順で抜管に入ります。
・吸入麻酔をoff
・酸素濃度を100%にする(敢えて空気を混ぜ80%くらいにする人もいます)
・筋弛緩がある程度切れているのを確認し、必要に応じてスガマデクス(ブリディオン)を投与
※ブリディオンの投与基準は「TOF2以上で2mg/kg、PTC1~2で4mg/kg、緊急回復が必要な場合に16mg/kg」となっています。逆にブリディオンを投与するためにはある程度筋弛緩が解けていることが前提となります。筆者はTOFのない施設に居る時には「明らかに自発呼吸が出ている」または「吸引によりバッキングが生じる」のいずれかを目安として筋弛緩の解除を確認していました。逆に筋弛緩が解けているという証拠がない場合スガマデクスは投与できず、それどころか再度鎮静を弱くでもいいのでかけて、意識下筋弛緩を防ぐ必要があります。ページ作成者が未熟な頃、これのせいで1時間筋弛緩の解除を待つためだけに部屋に待機したこともあります……。また、深筋弛緩でスガマデクスを使用した場合、筋弛緩が再燃するリスクもあるため、病棟に帰した後も油断できません。
・気管内吸引を行う
※気管内吸引の刺激でバッキングを起こすことが多いです。バッキングがあると筋弛緩が切れているサインになります。
・口腔内吸引を行う。
※口腔内吸引をするとチューブは不潔になるので、それで気管内吸引をしてはいけません。
・吸入麻酔を使用している場合、呼吸をさせて吸入麻酔を抜く一方で、無呼吸時間を作り自発呼吸を誘発する。
※これが意外と難しいです。なかなか自発呼吸が出ない場合は人工麻酔器に乗せて吸入麻酔濃度を下げながら、ある程度抜けたら手動で換気回数を4回/minにするなどしてCO2を溜めていくと良いでしょう。ある程度吸入麻酔が抜けたらバッキングを起こすなどのサインがあって自発呼吸が出てくることが多いです。セボフルランは呼気濃度が0.3%程度、デスフルランは呼気濃度が1.0%を切るくらいで反応が強くなることが多いので目安にしましょう。
※自発呼吸が出ない場合、オピオイドの残存と筋弛緩の残存、両方を考える必要があります。一般的には換気量が減るのが筋弛緩で呼吸回数が減るのがオピオイドとなります。上記もしましたが、筋弛緩の残存を疑う場合には軽い鎮静をかけて筋弛緩が解けるのを待つ必要があります。オピオイドの残存を疑う場合にはレバロルファン1mgの投与または完全拮抗が必要な場合はナロキソン0.2mgの投与を行いましょう。
・呼吸回数と呼吸量、意識を確認する。
※「呼吸回数8回以上」「換気量6ml/kg以上」「呼名に反応がある」の3点をチェックします。全ての基準を満たすのを待ちましょう。この基準は病院によって違うことがあります。
・すべての条件を満たしたら固定テープをはがし、介助者に挿管チューブのカフを抜いてもらう。
・カフが抜けたのを必ず確認してから抜管する。
・口腔内吸引をする。
・呼吸がきちんと出ていることを確かめる。
※この方法も多くの方法があります。ページ作成者は顔に換気用のマスクを密着させ呼吸量と呼吸数が見れるようにしています。呼吸が出ていない場合には補助換気などの対応が必要です。
・「舌出し」「両手の握手」「下肢を動かす」のそれぞれの指示をだし、従命が取れていることを確認する。
・バイタルが安定しており、酸素投与でSpO2が保たれていることを確認したらモニターをoffし、帰室指示を出す。
※病院によってはAラインがあればこの時に血液ガス分析を施行し、PaCO2の値が安定していることを確認する場合もあります。

帰室後の管理

帰室した後は術後管理が必要となります。
多くの場合ルーチンで酸素マスクで4L/min4時間程度の酸素投与を行いますが、呼吸に問題がないと考える場合必須ではありません。
術後のトラブルへの対応については合併症麻酔・術中トラブルのページの「術後トラブル」の項目を参照してください。

  • 最終更新:2018-01-13 18:13:17

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