悪性高熱症

※合併症麻酔に一歩深い知識を



診断基準

A 体温 麻酔中の体温が40℃以上
B 体温上昇 麻酔中に15分で0.5℃以上の体温上昇、かつ最高体温が38℃以上
その他の症状 頻脈、不整脈
アシドーシス(過換気)
筋強剛
ポートワイン尿
PaO2の低下
血清K+、CK、AST、ALT、LDHの上昇
異常な発汗
異常な出血傾向

分類

劇症型(f-MH) 診断基準のAかBを満たし、その他の症状を認めるもの。
亜系(a-MH) 体温基準を認めないが、その他の症状を認めるもの。

概要

悪性高熱症は症状の主体が発熱であるという点で悪性症候群と異なります。
吸入麻酔(ハロタンに多い)や脱分極性筋弛緩薬で誘発されることが多いのが特徴ですが、非常に類似していますし対処法も似ています。

注意点

① リスク

ハロタンを中心とした吸入麻酔や脱分極性筋弛緩薬で誘発されることが有名です。
その他、筋ジストロフィー、セントラルコア病、M周期性四肢麻痺、運動誘発横紋筋融解症などの筋疾患化関連します。

② 早期発見

導入時に開口障害や咬筋の筋強剛などが見られたら診断基準のその他の症状を確認する必要があります。
頻脈は頻度が高く、モニターで確認ができるため、真っ先に確認しましょう。
術中は酸素消費量が増大するためEtCO2の値が非常に参考になります。

③ 治療法

最高体温が上昇するほど予後が悪くなります。
悪性症候群を疑った場合には以下の対応をします。

① 原因薬剤(吸入麻酔・筋弛緩薬)を中止
② 高流量の純酸素で過換気にする(吸入麻酔を飛ばす)。
③ ダントロレンを投与する(1mg/kgを10分かけて静注。効果がない時は同量を追加静注。7mg/kgまで)
④ 冷却する(中枢温38℃になるまで)
⑤ 大量輸液(2mL/kgの尿量が得られる程度に。ついでに冷却もできる)
⑥ 必要に応じて鎮静(プロポフォールやミダゾラム使用)
⑦ 心室性不整脈があればリドカインを使用(1~2mg/kg、無効時同量を5分後投与)
⑧ 電解質補正(高K血症にGI療法、代謝性アシドーシスにメイロン)

④ フォローアップの方針

悪性高熱の再燃やDIC、ミオグロビン尿による腎不全や多臓器不全が致死的となり得ます。
48時間程度は集中治療を行い、その間ダントロレンを6時間ごとに1mg/kg投与します。内服可能になれば経口投与も可能です。
本人や家族にはその既往についてしっかりと伝えておきましょう。

  • 最終更新:2017-06-08 23:04:32

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