動揺歯・歯牙損傷

※合併症麻酔に一歩深い知識を



分類

※Millerの分類
0度 生理的な動揺
Ⅰ度 前後方向への動揺あり。
Ⅱ度 Ⅰ度に加え左右方向への動揺あり。
Ⅲ度 Ⅱ度に加え垂直方向への動揺あり。
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※引用サイト:動揺診査

概要

歯牙の動揺は高齢者において頻繁に認められる所見です。診察上は動揺がわかりにくいですが、臨床上は動揺まではしていないものの破折しやすくなっている場合もあります。
麻酔管理上問題となるのは「破折の有無」「落下した歯牙が落ち込まないか」「血液が垂れこまないか」などになるでしょう。

注意点

① 術前にリスクを評価する

歯牙損傷には歯の要因と挿管の要因の二種類が考えられます。
挿管困難が予想される場合には喉頭鏡の操作が困難になることから歯牙損傷のリスクが上昇することは予想されると思いますが、歯牙の要因は以下のようになります。

・歯牙の要因
動揺がある場合には当然歯牙損傷のリスクになります。
あるいは動揺がなくても歯周病によって歯槽骨が破壊されている場合も歯牙損傷のリスクになります。麻酔外来で歯周ポケットを測定することはまずないですが、下図のように歯根部が大きく露出しているような歯は歯牙損傷のリスクになりますので注意が必要です。
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※引用サイト:歯周病Q&A
その他、留置型のブリッジがあり左右の歯に大きく負担がかかっている場合にも歯牙損傷のリスクとなります。

また、学童期には歯牙の生え変わりがあるため、見た目は動揺していなくてもわずかな刺激で歯牙損傷が生じる可能性があります。この場合は仮に損傷してしまっても生え変わるためそれほど大きな問題になりませんが、気道への落ち込みなどには警戒が必要です。特に6~8歳ころは中切歯が生え変わるため歯牙損傷のリスクは高くなります。
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② 入室前にすべきこと

特に歯牙損傷のリスクが高いと予想される場合には歯牙損傷の可能性があることについて十分にインフォームドコンセントをする必要があります。
また、歯科外来に管理を依頼すると必要に応じて抜歯などの対応をしてくれることが多いです。今は周術期の歯科の管理に保険適応がありますので気軽に紹介することができます。また、歯牙の保護を強く希望される患者には歯科にプロテーゼの作成を依頼してもいいかもしれません。ただし、プロテーゼは保険適応がありません。

また、歯牙の落ち込みの予防のために糸を、落ち込んだ時のためにマギール鉗子を用意しておくと良いでしょう。

③ 歯牙損傷の予防のために

まずは歯牙が落ち込まないように危ない歯には糸を結び、糸の端を頬にテープで固定するようにしておきます。

挿管困難が予想される際にはマックグラス、エアウェイスコープなど挿管の難易度を減少させる器具の使用を考慮すると良いでしょう。

歯牙の保護のためには気管挿管用前歯保護デバイスの使用などを考慮すると良いでしょう。プロテーゼがある場合には使用しても良いでしょう。

麻酔中はエアウェイや挿管チューブ、バイトブロック、ラリンギアルマスクなどができるだけ歯で噛ませる機材が動揺歯に当たらないようにします。エアウェイは経鼻の物を用意しておくと良いでしょう。挿管チューブはもし欠損した歯牙があればその位置に設置しなければできるだけ頑丈な歯のあるところに設置します。バイトブロックは抜管直前に挿入するかガーゼなどの柔らかいものに変更し頑丈な歯のあるところに設置しましょう。場合によっては経鼻挿管を考慮してもいいかもしれません。

④ 挿管操作の注意点

挿管時に歯牙損傷を生じるタイミングとして開口時と挿管操作時が多く、抜管時に挿管チューブによって歯牙損傷が生じる場合もあります。仮に歯牙損傷が生じた場合、落ち込みそうなら即座に取り除けるようにしておきましょう。

・開口時
動揺歯や歯牙損傷のリスクが高い歯には直接圧力がかからないようにしましょう。特にブリッジのある歯は一見頑丈でも予想外に簡単に折れることがあるので注意が必要です。

・挿管操作時
特に上の前歯辺りは喉頭鏡のブレードが当たり歯牙損傷が生じやすくなります。動揺歯が強く喉頭鏡の操作が難しいと感じる場合には無理せずに挿管補助器具や歯牙の保護器具を使用して歯を保護するようにしましょう。

・抜管時
抜管のタイミングは呼吸が安定してきて麻酔科医の気抜けや水タイミングです。この時もしっかりと動揺歯の存在を意識して抜管↓チューブが歯牙に触れないようにすることとバイトブロックの位置の確認を忘れないようにしましょう。

⑤ 歯牙損傷が生じた場合

歯牙が口腔内に落ち込みそうならマギール鉗子などで即座に取り除きます。破折は下が落下はしていない場合にはGボンドなどで仮固定をすることができる場合もあります。可能なら歯科に依頼して固定してもらうと良いでしょう。
破折後は出血が生じる場合が多いです。圧迫して止血してしまいましょう。

いずれにしても術後にしっかりと説明する必要があります。

⑥ 気道に落ち込んだ場合

落下した歯牙が食道に落ち込んだ場合にはそこまで大きな問題とはならないことが多いですが、気道遺物となった場合換気困難になる場合がありますので対応が必要となります。
大まかには以下の手順になると思います。

1.マギール鉗子での除去を試みる
2.不可なら酸素100%にして換気を行う
3.耳鼻科や呼吸器外科、呼吸器内科にコンサルトする。
4.換気できないなら気管支ファイバーを用いて歯牙を左右いずれかの気管支に押し込むことも考慮する。

  • 最終更新:2017-06-08 23:12:01

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