てんかん

※合併症麻酔に一歩深い知識を



分類

※てんかんの分類
部分発作 単純部分発作 運動、感覚、自律神経に異常が生じるが意識が保たれる状態。
複雑部分てんかん 記憶障害はあるが、ボーっとしたり自動症を生じる程度の発作
全般発作 欠神発作 全身の筋肉の緊張が消失し脱力する発作。数秒程度持続。
ミオクロニー発作 体の一部分の筋肉が一瞬大きく収縮する発作。
強直間代性発作 強直発作と間代発作を起こすもの。終末睡眠に移行することもある。
脱力発作 数十秒に渡り意識が低下する発作。運動異常はない。
二次性全般化発作 部分発作から始まり強直間代性発作に移行するもの。

治療薬

部分発作や二次性全般化発作にはに対してはカルバマゼピン(テグレトール)が第一選択。その他フェニトイン(アレビアチン)やゾニサミド(エクセグラン)を使用する。
全般発作に対してはバるプロ酸が第一選択。欠神発作・脱力発作にはエトスクシミド(エビレオプチマル)、ミオクロニー発作にはクロナゼパム(リボトリール)、強直間代発作にはフェノバルビタール(フェノバール)、クロバザム(マイスタン)、フェニトイン(アレビアチン)を用いる。

概要

てんかんは脳の異常興奮によって生じるものである。
覚醒時に生じると突然の転倒などの原因や交通事故の原因になることがあり、非常に危険であるが、この症状が麻酔中に出ることもある。長時間の発作は脳に障害が生じるともされており、麻酔において重要なのは「てんかん発作を起こさないこと」「てんかん発作が生じた際に速やかに気付くこと」であると考えられる。

注意点

① 内服の継続

てんかんのコントロールのために内服している薬剤は基本的に継続して内服します。
長期間内服ができないような状況ではフェニトインやフェノバルビタールの注射剤もあります。
・フェニトイン:2.5〜5mLを1分間1mLを越えない速度で静注。無効なら30分後2〜3mLを追加投与するか他の対策を考慮する。小児は体重で調整。半減期が10時間程度と短く緊急時に使いやすい。
・フェノバルビタール:1回50~200mgを1日1~2回、皮下又は筋肉内注射。半減期は100時間近くあり維持に向いている。

② 薬物の相互作用に注意

てんかんの系統は相互作用の多い薬が異常に多いため注意が必要です。以下薬剤名の所をクリックすると添付文書に飛びますので、参照してください。

フェニトインフェノバルビタールカルバマゼピン特に抗真菌薬(血中濃度上昇)、アセトアミノフェン(血中濃度上昇)、利尿薬(血中濃度上昇)、ワーファリン(効果減弱)、インスリン(効果減弱)、ステロイド(効果減弱)、非脱分極性筋弛緩薬(効果減弱)辺りが麻酔科領域で併用する可能性があります。特に血中濃度が上昇するものは抗てんかん薬や投与薬の副作用が強く出ることがあるため、注意が必要です。
ゾニサミドチトクローム系だが、麻酔でよく使う薬に副作用はない。パーキンソン症状や悪性症候群に注意。
エトスクシミドリボトリールマイスタン:その他の抗てんかん薬のみ。

③ てんかんを誘発する薬物の選択に注意

※以下の薬物はてんかんの誘発に関わることがあるので使用に注意する。
エンフルラン・セボフルラン(高濃度に注意)、ケタミン、ドロレプタン

※以下の薬物はてんかんを抑制するとされている。
イソフルラン、チオペンタール、ジアゼパム、ミダゾラム、オピオイド、プロポフォール(少量では逆効果かも)

④ 麻酔管理のポイント

薬物の相互作用の他、抗てんかん薬は中枢へ作用するので麻酔薬の効果を増強する可能性があるため、覚醒遅延などにも注意が必要。一方で術後の痛みがあるとてんかんが誘発されることもあるので
浅麻酔になると転換が誘発されやすいのでやや深めの麻酔管理を心掛ける。
電解質異常や換気の障害、脱水もてんかんの誘発因子となるため積極的に動脈ラインを取り、調整を心掛ける。

⑤ てんかん発作が生じた時の対応

てんかん発作が出現した時には以下の対応をします。即座に生命の危険に晒されるわけではないので冷静に対応しましょう。

・転倒や落下に気を付ける:起立時には転倒に、仰臥位時にはベッドなどからの落下に気を付けます。必要に応じて抑制しましょう。
・舌をかまないように注意:強直間代発作では舌をかんでしまうことがありますので可能ならガーゼなどの布やバイトブロックなどで舌をかまないようにしましょう。ただし、小さいものだと誤飲の可能性が有りますので物は選びましょう。
・酸素投与:低酸素血症から似たような症状が出る場合もありますし、発作により換気障害が出る場合があるので酸素を投与します。
・ブドウ糖液投与低血糖が生じている場合に似たような症状が出ます。とりあえずブドウ糖液を1A程度投与しましょう。血ガスから否定的な場合には省略可能です。
・専門医コンサルト:以下の治療を続けながら、可能なら神経内科医にコンサルトします。指示を仰げるなら仰ぎましょう。
・血ガス採取:手が空いているスタッフがいるなら血ガスを取り、原因検索を行いましょう。原因がわかればそれぞれに対応を行ってください。結果が出るまで以下の治療を継続して構いません。
・脳波をモニタリング:BISを使用していない場合はBISが簡易なモニターとして使用できます。可能なら脳波を取りましょう。
・ジアゼパム(セルシン)投与:10mgを2分以上時間かけて投与します。緑内障、重症筋無力症、リトナビル(抗HIV薬)内服中、バイタルが崩れている時は禁忌です。
・フェニトイン(アレビアチン)投与:上記が無効ならこちらを投与します。2.5〜5mLを1分間1mLを越えない速度で静注。無効なら30分後2〜3mLを追加投与するか他の対策を考慮します。洞性除脈や伝導障害がある場合には禁忌です。また、肺高血圧症の治療薬(タダラフィル、マシテンタン)、C型肝炎の治療薬(リルピビリン、アスナプレビル、ダクラタスビル、バニプレビル、ソホスブビル)を内服中の患者も禁忌です。
・フェノバルビタール投与:上記でも無効ならこれを選択します。水で析出する場合があるので、1回50~200mgを1日1~2回、皮下又は筋肉内注射します。
・キシロカイン:以上で改善なければ静注用キシロカインを1A緩徐に静注します。
・ラボナール:循環動態が許す限り痙攣が泊まるまでラボナールを投与します。未挿管の場合は挿管や声門上器具の使用を考慮する必要があります。場合によっては筋弛緩薬の投与も考えます。

※筋弛緩薬を投与すると痙攣は止まりますが、脳の異常興奮は抑えられないため、根本的な解決にはなりません。

⑥ 術後の注意

音や光の刺激でてんかんが誘発されることがあることに注意する。
抗てんかん薬はできる限り早く再開する。

  • 最終更新:2017-06-08 23:03:44

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