風邪

※合併症麻酔に一歩深い知識を



分類

※風邪スコア
① 鼻閉・鼻汁・くしゃみ
② 咽頭発赤・扁桃腫脹
③ 咳嗽・喀痰・嗄声
④ 呼吸音異常
⑤ 発熱(乳児38.0, 幼児37.5℃以上)
⑥ 食思不振・嘔吐・下痢
⑦ 胸部X線写真異常
⑧ 白血球増多(乳児1.2万, 幼児1万/mm3以上)
⑨ かぜの既往(入院前2週間以内)
⑩ 年齢因子(生後6ヶ月未満)
0~2点:健常群
3~4点:境界群
5~10点:危険群

概要

風邪とは上気道を主体とする症候群のことである。
頻度が高く一般的には軽視される傾向にあるが。全身麻酔時には挿管など気道を刺激をする操作が強く、麻酔後に免疫抑制もある程度生じる可能性が高いため、風邪がある場合には手術の可否を慎重に選択する必要がある。
頻度が高いため風邪の合併により手術の可否を決めることは麻酔科医ならば数多く経験するため、基本指針を理解しておくことが大事である。

注意点

① 風邪が治っていても期間を開ける

風邪の既往がある場合には気道の過敏性が亢進しているため、術後の気道トラブルが生じる可能性が高いとされています。
そのため、安全面を考えるのであれば、風邪が治ってから成人は2週間以上、小児は4週間以上期間を開けると良いとされています。
風邪スコアを参考にして健常群なら手術施行可能、境界群なら状況を考慮して延期できそうなら延期、危険群ならできる限り手術を避けるという指針が一般的でしょう。
ただし、移植などで術後に免疫抑制剤を使用しなければならない場合やステロイドの長期内服などで免疫が低下している場合には風邪スコアだけでは致命的になることがありますので、総合的な評価も必要となります。

② 期間を開けられない時

緊急手術や社会的な要因などでできる限り期間を開けたくない場合が存在することも多いです。
この場合はリスクを説明の上で、以下のようにすることが基本指針となります。

1.風邪薬の内服を継続する:内服している感冒薬は継続してもらうようにします。ただし、去痰薬は気道分泌を促進することがあるため、外した方が良いでしょう。
2.出来る限り気道刺激が少ない方法を:可能なら局所麻酔や区域麻酔で対応します。全身麻酔ならラリンギアルマスクなどの声門上器具を考慮すると良いでしょう。
3.抗コリン薬の投与:全身麻酔の際には気道分泌を減らすために抗コリン薬を投与します。
4.感染対策をする:風邪とは言え手術を受ける患者には致命的になることがあります。感染を広げないように通常通りマスクや手袋をきちんとするだけではなく、手を触れた可能性のある場所はより念入りに清掃する必要があります。
5.術中の注意事項:酸素拡散能の低下、肺コンプライアンスの低下、気道抵抗の増加、気道分泌物の増加、上気道の攣縮のリスクの増加、喉頭痙攣のリスクの増加など、気道系のトラブルは一通り起こる可能性が出ることに留意する必要があります。気管支喘息喉頭痙攣に準ずる対策をしておく方が安全でしょう。また、吸入麻酔薬の方が安全であるとされています。
6.術後の注意事項:術後にも咳嗽・喀痰の増加や呼吸器感染症のリスクが増大します。身体所見や血液検査などで感染の増悪がないかをモニタリングする必要があります。

  • 最終更新:2017-06-08 23:11:52

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