気道確保困難(DAM)
[PR] 新合併症患者の麻酔スタンダード
※合併症麻酔に一歩深い知識を
- 分類
- マスク換気困難・挿管困難予測12因子
- 概要
- 気道確保アルゴリズム
- 注意点
- ① 術前より危険因子を予測する
- ② 適切な体位を取る
- ③ マスク換気が出来ないとき
- ④ 挿管出来ないとき
- ⑤ マスク換気ができず、挿管が失敗したとき
- ⑥ 声門上器具で換気が改善しない場合
- ⑦ 甲状輪状膜穿刺ができた後の換気。
- ⑧ 外科的気道確保が成功しても換気が出来ない場合
分類
※換気状態の分類
換気状態正常(V1) | カプノグラムで全ての位相が確認可能 |
換気状態正常でない(V2) | カプノグラムでⅡ相まで確認可能 |
換気状態異常(V3) | カプノグラムで波形が確認できない |
※画像引用:救急一直線 特別ブログ グローバル化への道
マスク換気困難・挿管困難予測12因子
※マスク換気困難・挿管困難予測12因子
マランパチ分類3~4 | 頚部放射線後・頚部腫瘤 | 男性 |
短いオトガイ間距離 | 歯牙の存在 | BMI 30以上 |
46歳以上 | 顎鬚の存在 | 太い首 |
睡眠時無呼吸症候群 | 頚椎不安定・稼動制限 | 下顎の前方移動制限 |
術前予測危険クラス | 発生頻度 | オッズ比 |
---|---|---|
Ⅰ(危険因子0~3個) | 0.18% | 1.00 |
Ⅱ(危険因子4個) | 0.47% | 2.56 |
Ⅲ(危険因子5個) | 0.77% | 4.18 |
Ⅳ(危険因子6個) | 1.69% | 9.23 |
Ⅴ(危険因子7~11個) | 3.31% | 3.31 |
概要
麻酔において導入時の失敗は短時間で直接死に繋がる恐ろしい部分です。
適切な気道管理を行うことが重要となります。
このページは日本麻酔学会の気道管理ガイドライン2014に基づいて作成されています。
気道確保アルゴリズム
※緊急時はこのアルゴリズムにしたがってください。
グリーンゾーン:安全領域、イエローゾーン:準緊急領域、レッドゾーン:緊急領域
※基本は「マスク換気」→「無理なら挿管」→「無理なら声門上器具(ラリマ)」→「無理なら輪状甲状膜穿刺」→「無理なら輪状甲状膜切開」→「無理なら外科的気管切開」の順です。また、早いうちに応援を呼びましょう。
注意点
① 術前より危険因子を予測する
上記のマスク換気困難・挿管困難予測12因子を用いて、マスク換気困難および挿管困難の有無を予測します。
挿管困難画予測される場合には意識下挿管を考慮に入れる必要があります。
② 適切な体位を取る
ルーチンで適切な体位を取っていると思われますが、挿管困難やマスク換気困難があるときには特に体位に気を使う必要があります。
座位や逆トレンデレンブルグ位をとると、preoxigenacionが効率化されます。
③ マスク換気が出来ないとき
マスク換気が上手くいかないときには以下の方法があります。
この時点でカプノグラムのエラーでないことは必ず確認しておきましょう。
・ヘッドバンドなどによるマスクの固定をする。
・エアウェイを挿入する。
・ベンチュレーターのスイッチをオンにして、両手でマスクホールドをする。
→同時にTriple airway maneuver(頸部進展,下顎挙上,開口)を行う
→PEEPを高めにする。
・リークする分、酸素流量を増やす
・筋弛緩薬を投与する
・筋弛緩薬やオピオイドを拮抗し自発呼吸を出す
④ 挿管出来ないとき
挿管出来ないときは換気状態が良好であればリスクの上昇には繋がりませんが、ある手段で同一者が3回以上手技を行うことは喉頭浮腫などが出現するリスクとなります。挿管二失敗するたびにマスク換気が可能であることを確認し、マックグラスやエアウェイスコープ、トラキライトなどその他の挿管手段を用意するか、他者に交代しましょう。
⑤ マスク換気ができず、挿管が失敗したとき
JSAで言うところの準緊急領域に当たります。
上級医の応援を呼び、緊急気道確保器具をすぐに使用できる状態にしておきながら、ラリンギアルマスクなどの声門上器具の挿入を試みてください。
・声門上器具の使用で換気状態が正常(V1)になった場合には以下の選択があります。
① 意識と自発呼吸を回復させる
② 声門上器具を通して挿管を行う
③ 声門上器具のまま手術を行う
・換気状態が正常ではない(V2)場合にはまだ準緊急領域と考え、以下の選択肢を考慮してください。
① 意識と自発呼吸を回復させる
② 声門上器具を通して挿管を行う
③ 声門上器具の大きさや種類を変える
④ 外科的気道確保を行う
⑤ 気管支ファイバーを介して声門の状態を確認する。
⑥ 声門上器具で換気が改善しない場合
JSAで言うところの緊急領域であり、外科的な介入を考える必要があります。
また、同時に低O2血症と高CO2血症による不整脈や心停止に備え、救急薬剤などを準備してください。
心機能障害が生じたときには胸骨圧迫を施行する必要がありますが、気道確保をしないと状況は改善しませんので、外科的気道確保の方が優先されます。
※外科的気道確保の順序としては以下の通りになります。
・体表から輪状甲状膜を触れる:輪状甲状膜穿刺
・体表から輪状甲状膜を触れない:輪状甲状膜切開
・輪状甲状膜切開施行時にも輪状甲状膜を同定できない:外科的気管切開
⑦ 甲状輪状膜穿刺ができた後の換気。
緊急時に18G針で輪状甲状膜穿刺をすることが必要となることがあるかと思います。
その際は5mlのシリンジをカットすると、針に直接麻酔器を接続することができるようになります。下図の手順で接続しましょう。
⑧ 外科的気道確保が成功しても換気が出来ない場合
まず留置が正確かを確認してください。留置に問題なさそうなら気管支攣縮や気管の閉塞など、下気道の閉塞が無いかを評価する必要があります。
場合によっては薬剤による治療や、内視鏡的な評価を行って下さい。
- 最終更新:2018-07-24 22:12:05