気管支喘息
[PR] 新合併症患者の麻酔スタンダード
※合併症麻酔に一歩深い知識を
- 分類
- 概要
- 注意点
- ① 上気道感染合併時には中止を考慮する
- ② コントロール不良の場合は手術の中止を考慮する。
- ③ 前投薬
- ④ 使用できない薬剤に注意
- ⑤ 麻酔法について
- ⑥ 気管支喘息であるかの判断について
- ⑦ 術中喘息発作出現時の対応
- ⑧ 抜管時の対応
分類
※治療前の臨床所見による喘息の重症度分類
小児 | 大人 | |
---|---|---|
ステップ1 | ・数回/年 ・短時間で改善・持続しない |
・1回/週未満 ・夜間症状2回/月未満 |
ステップ2 | ・1回/月~1回/週 ・時に呼吸困難あり |
・1回/週~1回/日 ・日常生活障害1回/月以上 ・夜間症状2回/月以上 |
ステップ3 | ・1回/週~1回/日 ・時に中・大発作があり日常が障害 |
・毎日 ・β吸入をほぼ毎日 ・睡眠障害1回/週以上 ・夜間障害2回/月以上 |
ステップ4-1 | ・毎日 ・1~2回/週で大・中発作となる |
・毎日 ・治療下でもしばしば増悪 |
ステップ4-2 | ・ステップ4-1の治療でも症状持続 |
概要
気管支喘息は慢性の炎症を背景とし、気流制限、気道過敏性の亢進、気道壁の理モデリングが生じるものである。
発作時には閉塞性換気障害をきたす。
慢性期の管理として、ステロイドやテオフィリン、β刺激薬などを用いる。
注意点
① 上気道感染合併時には中止を考慮する
呼吸器感染は喘息を誘発する重要な危険因子であるため、上気道感染が疑われるときは導入時の刺激や術中の刺激などで喘息が誘発される危険性が非常に高くなる。
喘息合併患者が上気道感染を起こしている時はまず中止を考える。
感冒から回復しても二週間程度は上気道の過敏性が亢進していると考えるべきである。
② コントロール不良の場合は手術の中止を考慮する。
喘息合併の場合にはステップ1くらいまでコントロールできるようにする。
ステップ3以上では手術は避けた方が良い。
最終発作から三週間程度は上気道の過敏性が亢進していると考えられ、手術は避けた方が良い。
また、上腹部手術や胸郭の手術では呼吸器トラブルが多く、手術はなおさら慎重を要する。
③ 前投薬
基本的には普段内服している薬剤はそのまま使用を継続する。
ステロイドや気管支拡張薬を吸入している場合には入室2時間前に吸入を指示する。
コントロールに不安がある場合には投薬の有無に関わらず、ヒドロコルチゾン2mg/kgを手術開始2時間前に緩徐に静注する
④ 使用できない薬剤に注意
・NSAIDsは特に成人ではアスピリン喘息を合併している可能性があるため使用は避けた方が良い。
・チオペンタールも気管支痙攣を誘発する可能性があるため、禁忌となっている。
・硫酸アトロピンは痰が粘稠になり吸引できなくなる可能性があるため避けた方が良いが、必要なら投与しても良い。
・β遮断薬は喘息発作を誘発するため禁忌である。
・強オピオイドは全体的に禁忌か慎重投与であるが、代替がきかないことが多く臨床現場で使用されていることも多い。術後の呼吸管理のために量は少なめにすると良い。ペンタジンやソセゴン、セダペイン、レペタン、スタドールには気管支喘息についての言及はない。
・筋弛緩薬のうち、エスラックス、マスキュラックス、ミオブロックは気管支喘息を誘発する危険性があるため慎重投与とされている。
⑤ 麻酔法について
全身麻酔と局所麻酔、挿管と声門上器具ではそれぞれに安全性についての明らかな差異はないため慣れた方法で行うのが良いとされる。
一方で硬膜外麻酔により鎮痛を積極的にすると喘息の発作が抑えられ、安全性が高いとされる。
静注薬としてはプロポフォールやケタミンが気管支拡張作用を持つが、吸入麻酔の気管支拡張作用が非常に強力なので、吸入麻酔を選択する方が安全であるとされる。
⑥ 気管支喘息であるかの判断について
麻酔管理中に気道内圧の上昇や呼気CO2の上昇が認められた場合には気管支喘息の可能性を考慮するが、対応する前にチューブの位置異常や喀痰による閉塞、屈曲がないかなどを確認する必要がある。
喘息は呼気におけるwheezeが特徴であり、吸気時の雑音は喘息ではない可能性が高いことを考慮する。
⑦ 術中喘息発作出現時の対応
⑥の項目から、喘息発作を疑う場合には以下の対応をする。途中で症状が軽減すれば経過観察をし、次にどうするかを判断する。
1.その他の原因でないことを確認する。
2.手術を中断してもらい、患者へのストレスを減少させる。
3.酸素濃度を100%とし、吸入麻酔の濃度を上げる。吸入麻酔が十分効いてから気管内吸引をしてみてもいい。
4.噴霧式吸入器があれば使用する。
5.リドカインを気管内に噴霧する。
6.アミノフィリンを2~5mg/kg静注する(テオフィリン投与時には量を少な目にする)
7.ステロイドをヒドロコルチゾンで200~1000mg静注する。ただし、アスピリン喘息が疑われる場合にはデキサメタゾンを使用する。
8.ボスミン0.1~0.3mlを皮下注する。20~30分程度で反復投与できる。
※もし低酸素血症などで不整脈が生じたら心肺蘇生を通常通り行う必要がある。
⑧ 抜管時の対応
基本的には通常通りの抜管を行う。
口腔や気管内の吸引は麻酔深度が十分なうちに行うこととする。
咳嗽反射の予防にキシロカイン1mg/kgを静注しても良いが、覚醒が悪くなる可能性がある。
- 最終更新:2017-06-08 23:12:20