ステロイド長期内服

※合併症麻酔に一歩深い知識を



※ステロイドの力価の換算についてはこちらを参照してください。

分類

ステロイドカバー
低侵襲手術 ステロイド内服継続、補充不要。
中等度侵襲 ステロイド内服継続。手術前にヒドロコルチゾン50mg静注、以降8時間ごとにヒドロコルチゾン25mg静注。
大侵襲 内服継続。導入前にヒドロコルチゾン100mg静注、以降8時間ごとにヒドロコルチゾン25mg静注。

概要

成人では副腎皮質でステロイドが一日で10mg程度作られています。ステロイドを長期内服している場合、フィードバックにより副腎皮質で精製されるステロイドの量が減少することが知られています。その場合手術によるストレスにより本来分泌されるべきステロイドが分泌されないこともあります。

注意点

① 原疾患と合併症を正確に把握する

ステロイドを長期間使用している場合、SLEなどの全身性の疾患が原因となっていることも多くあります。
当然その他の合併症が出現していることもありますので、原疾患と合併症を正確に把握し、症状に応じた麻酔を心がけましょう。

② 耐糖能異常

ステロイドを長期内服している場合には耐糖能異常が出現している場合があります。
インスリンの持続投与などで細胞内への党の取り込みを促進することが必要となる場合もあります。

③ 易感染性

ステロイドの長期内服により免疫抑制が出現している場合があります。
硬膜外麻酔やCV挿入などの清潔化操作には特に注意しましょう。

④ ステロイドカバー

長期間のステロイド内服によりストレス反応に対する生体のステロイド分泌が低下している場合があります。
ステロイド中止をした場合でも1年程度は反応性が低下している可能性がありますので、ステロイドカバーを擁する場合があります。

⑤ ステロイドが不足している場合

ステロイドの分泌が不足した状態を副腎クリーゼと言います。
副腎クリーゼは倦怠感や食欲不振、易疲労感などを特徴としますが、全身麻酔中にはそれを察することはできません。
術中はモニターとして血圧低下が出てきます。
また、血ガス上Na低下およびK上昇が生じやすく、血糖値の低下を伴う場合もあります。
CBCが見れるときにはWBCの上昇や好酸球の上昇も現れますが、これは手術中ではあまり参考にならないでしょう。

⑥ 副腎クリーゼになった場合の対応

上記症状が出現し、副腎クリーゼが疑われるような状況ではヒドロコルチゾン100mgを静脈内投与し、低血糖などに対してはブドウ糖液で補正する。効果が弱い時にはヒドロコルチゾンをさらに100mg追加投与しても良い。

  • 最終更新:2017-06-08 23:09:12

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