シトルリン血症

※合併症麻酔に一歩深い知識を



分類

シトルリン血症Ⅰ型 アルギニノコハク酸合成酵素欠損症により生じる。主に一次治療により対応。
シトルリン血症Ⅱ型 シトリン欠損症(SLC25A13遺伝子異常)により生じる。肝移植の成功例がある。
アルギニノコハク酸尿症 アルギニノコハク酸リアーゼ欠損症により生じる。主に一次治療により対応。

概要

 どの疾患も尿素サイクルの異常によってアンモニアの代謝が妨げられ、高アンモニア血症生じるのが基本的な病態である。
 また、幼少期に閉塞性黄疸や体重増加不良、血液凝固能低下、低蛋白血症、低血糖などを生じることがある。
 麻酔についてはシトリン欠損症の肝移植に関する報告があり、本稿の参考文献ともさせていただいている。シトリン欠損症の病態についてはこちら参照の事。

注意点

① 術前の管理をしっかりとする。

 いずれの場合も高アンモニア血症が出現している場合やガラクトース血症が生じている場合など、術前に問題が生じている場合が多いです。手術前にできるだけこのような状態を改善しておく必要がありますが、術前管理には以下の方法が考えられます。

・シスチン欠損症の場合には糖質による高カロリー輸液を避ける:シスチン欠損症ではNADHの過剰産生によりクエン酸回路による好気呼吸が阻害されていることが病態の一つとなります。そのため高カロリー輸液は避け、使用するなら5%ブドウ糖程度にする必要があります。
・栄養管理:新生児乳児に置いて肝機能障害の持続や高ガラクトース血症がある場合にはガラクトース除去ミルクを使用する必要があります。これも特殊ミルク事務局に連絡することで入手可能です。経口摂取が可能であれば高脂肪低炭水化物食で管理を行います。また、胆汁鬱滞などによりビタミン欠乏がある場合には各種のサプリメントを投与する必要があります。L-アルギニン(3-12g/day)が有効であるとするデータもあります。
・高アンモニア血症に対する薬物使用:高アンモニア血症がある場合にはラクツロース(15-60ml/day)などのアンモニア血症に対する薬剤の使用を行います。。腸内細菌によるアンモニア生成を抑えるためカナマイシン(1.5g/day)も有効とされています。
・中鎖脂肪酸トリグリセリドの使用:吸収がよく糖代謝を用いないため、シトリン血症においてNADHの蓄積がある場合でも栄養を獲得しやすい。新生児乳児の場合には特殊ミルク事務局に連絡すると手に入れることができます。成人の場合には日清などからの市販品があります。
・胆汁鬱滞がある場合:通常の胆汁鬱滞と同様、ウルソデオキシコール酸などを使用し、改善を試みます。

② 術中のアンモニアに警戒

 術中には麻酔や手術侵襲により高アンモニア血症が生じる可能性が考えられるため注意が必要です。
 過去の肝移植の症例報告ではアミノレバンを40ml/hの速度で投与し(体重44kg)、術中2,3時間に一度血算、電解質、生化学、PT、APTT、アンモニアを測定しており、アンモニアの上昇は軽度であったと報告されています。
 ただし、アミノレバンはアミノ酸代謝異常が禁忌に指定されており、高シトルリン血症がこれに該当する可能性があります。術前のアンモニア管理をしっかりとしながら術中の血糖値が上昇しないように気を遣う方が現実的かもしれません。

③ シトリン欠損症における輸液の選択

 シトリン欠損症は糖質を含む高カロリー輸液で症状の増悪が生じることから、特に急速輸液をする際には糖質を含む輸液は避けた方が無難であると考えられます。具体的な方法に関するコンセンサスはないと思いますが、術中は血糖値とアンモニアの値を見ながら糖質を投与するかどうかについて決定していくと良いでしょう。

  • 最終更新:2017-06-08 23:08:52

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